なまずのねどこ

ちょっとオタク寄りな旅の記録。B級スポットとか県境とか駅とか魚捕りとか。常にどこかに出かけていたい負け組大学生。

急行はまなす最後の夏 北海道放浪記 - Part2 札沼線と留萌本線


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nenjin.hatenablog.com

 ↑前回

 

明朝6時。目を覚ますと最後の停車駅である新札幌を出たところであった。北の大地に踏み入るときめきは何度訪れても褪せないものだが、陸上交通で「朝目を覚ませば北海道」という理想的なシチュエーションに身を置くのは最初で最後の経験だろう。

 

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7時間半に及ぶ夜汽車の旅は道都札幌で幕を閉じる。先頭の機関車が出発時と違うのは途中の函館でのスイッチバックのため。海峡を跨いで旅人たちを送り届けた青い雄姿もどこか誇らしげに見えた。

ホームに降り立ったその足でさらに北を目指す。乗り換える先は函館本線でもいいが、乗った経験のなかった札沼線学園都市線)を選ぶことにした。

 

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電化区間の北端である当別町界隈を境に、 車窓は近郊の住宅地から長閑な農耕地帯へと大きく様変わりしていく。とりたてて目立った絶景スポットがあるわけではないが、都市圏や田畑、後背湿地、海と平地を阻む山塊…と、長くない走行距離の間に「平凡な北海道らしさ」がよく詰め込まれた路線であると思う。

 

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終点新十津川では、地元の幼稚園児たちとその先生方が一日2便(2016年春以降は1便)の列車を出迎えてくれる。かわいらしい手作りのポストカードまで手渡されて思わずオタクスマイル笑顔がこぼれた。

駅前では夏の花々に交じって咲き乱れるコスモスが旅人に秋を囁く。

 

札沼線という路線名は元来の起終点である札幌(桑園)と石狩沼田に因むものであるが、末端の区間が1972年に廃止されて以来、半世紀近くこの新十津川駅が終着駅となっている。

 

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路線の接続こそないものの、函館本線滝川駅とは石狩川を挟んですぐ対岸、3kmほどの距離にあるため徒歩で旅程を繋ぐことも不可能ではない。バスの便もあることにはあるが、道内屈指の大河を歩いて渡るのもまた一興。晴れ間が見え始めた青空を知りながら滝川へと歩を進めた。

 

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滝川駅に到着。函館本線根室本線という道央の二大幹線の結節点だけあって、駅舎や構内はかなり立派なものであった。ただ市街地はシャッター街や空きテナントが目立ちお世辞にも活気があるとは言い難く、鉄道町としての栄華の軌跡と産業に乏しい内陸の斜陽都市としての著しい衰退の対比には少しばかり物悲しさを覚えた。

 

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隣の特急停車駅である深川駅へ。札幌から見て岩見沢を過ぎた先であるこの辺りは普通列車の本数が激減するため、特急の方が多い時間帯もままある。ここで分岐して日本海岸へと結ぶ留萌本線に乗車。

 

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束の間の晴れ間は陰りを見せ、山を越えた先の日本海は荒々しく白波を上げる。留萌から増毛までの区間はこの旅の時点でももう廃止が取りざたされており(2016年12月に廃止)、せめて駅名標だけでも撮っておこうという寸法での訪問でもあった。

 

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深川から1時間半ほどで終点増毛に着いた。消えゆく鉄路との別れを惜しむ同志だろうか、海辺の鄙びた港町の様相に似合わず旅人は多い。廃線となった現在でも駅舎は取り壊されることなく観光に活かされているという。

 

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踵を返し、北秩父別という簡素な無人駅に降り立つ。深山幽谷の秘境などではないにもかかわらず、周辺に民家はほとんど見当たらない。普通列車も半数が通過するという過疎駅っぷりであるが、すぐ横を深川留萌道が通過しており、完全な平地なのもあいまって車での探訪は割合容易そうだ。ホームと待合室自体は木の板張りの非常に簡素なものである。東京から来たという少し年上の青年と降り合わせ、次の列車が来るまで旅談義に花を咲かせた。

 

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この日の宿のある旭川に到着。近代的で開放感のある駅前だが、それに釣り合わないまでに人の影が少ない。それも夕刻の通勤時間帯に、である。寂しいが、北海道で札幌以外に活気ある都市というのはもうあまりないのかもしれない。

さらに北上する次の日に備えて早めに床に就くことにした。

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