山口県岩国市の錦帯橋周辺では、厄除けのお土産や郷土玩具として「石人形」なるものが売られています。
昔から城下町岩国を代表する伝統工芸品ですが、ひとつひとつの人形は人間が作ったものではなく、その正体はニンギョウトビケラという水生昆虫が川底の砂利を自らの吐く糸で縫い合わせて作った巣。流れの速い清流の岩に固着する形で、主に付着藻類を食べて生活しています。水中生活をするのは芋虫のような幼虫期のみで、羽化すると小さな蛾のような姿になります。
ニンギョウトビケラという昆虫自体は、良好な水質が保たれている川であればかなり普通に見られる生き物です。写真のように、錦帯橋の下を流れる錦川の河原でも簡単に見つけることができます。ことこの界隈では治水のために錦帯橋に埋められ人柱となった少女の生まれ変わりという伝承があり、大自然と人間との関わりを背景に育まれた民話の流れをくむ工芸品として親しまれるに至っています。
岩国市街方面から錦帯橋を隔てた錦川右岸にある岩国石人形資料館です。入場無料。
数分もあれば一通り見て回れるこぢんまりとした施設ですが、石人形を使った観光客向けのお土産も多数あり、生き物オタクとしても民俗学好きとしても一押しのスポットです。