なまずのねどこ

ちょっとオタク寄りな旅の記録。B級スポットとか県境とか駅とか魚捕りとか。常にどこかに出かけていたい負け組大学生。

近くて遠い秘境の島 黒島・薩摩硫黄島の旅 1日目


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年明けムードも冷めやらぬ1月第2週の3連休。コロナが再び猖獗を極めないうちに行っておかねばと、薩摩半島の南方に浮かぶ三島村の2島を2泊3日で旅した。

 

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3つの有人島からなる三島村。実に単純明快なネーミングである。薩南諸島の北端にあたり、元来下七島(トカラ列島)とともに十島村を構成していた経緯から、上三島などとも呼ばれている。

人口は400人を少し超える程度。同じ鹿児島県の屋久島や奄美大島のように観光で賑わうわけでもなく、大きな産業もない。島を結ぶフェリーは週に4便のみ。南西諸島で最も九州に近い島々であると同時に、最も訪れにくい部類の島々でもある。

ただ、このような島にこそ魅きつけられるのは私だけではあるまい。「日本の秘境100選」にも名を連ねており、その不便さを謳歌せんと、多くの奇特な旅人が船路に心を躍らせたに違いない。

 


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1月8日。生憎の雨天であった。

鹿児島本港南埠頭の一角にあるフェリーみしま待合所は、出港2時間前から島へ渡る人で賑わっていた。コロナワクチン接種証明書を提示し、早々に乗船手続きを済ませる。

室内には、アフリカ発祥の打楽器「ジャンベ」が所狭しと並べられている。このジャンベは三島村のシンボル的存在として認知されているようで、みしまの船体にも描かれていることを乗船時に知ることとなった。硫黄島ジャンベスクールの日本校が開設された縁だという。

 


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8時30分に乗船開始。かなり新しく綺麗な船で、雑魚寝の大部屋ながら快適に過ごすことができた。船内でTシャツや焼酎の販売も行っている。

 

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乗船口のタラップの脇にはパンの移動販売車が横付けしてあり、船内放送でもこの旨が案内されていた。船内に食堂はない(食事用のラウンジはあるが)ため、この機会を逃してしまうと島に上陸して宿か商店に辿り着くまで食事を調達することができない。要注意である。

 


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9時40分、定刻通りに出港。小雨のぱらつく天気ながら、数人のご婦人が手を振って船を見送ってくれていた。

 

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1時間も経つと船は指宿の知林ヶ島沖に差し掛かり、開聞岳の秀麗な山容を右舷に望みながら進んでゆく。この辺りまでは種子屋久奄美群島へ向かう船と同じ航路であるが、佐多岬沖で南西に針路をとって三島へ向かう。

 


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12時30分、最初の寄港地である竹島に到着。無論、領土問題を抱えるあの島とは別物である。その名の通り島全域を大名竹に覆われている美しい島で、そのタケノコを名産品としている。

島の人々がジャンベを叩いて船を出迎える。数多の出会いと別れを彩ってきたであろうこの太鼓の音も、彼らにとっては他でもない日常なのだ。

生活物資を積み降ろし、十数分で船は再び艫綱を解く。

 


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竹島を出港すると、既に次の硫黄島(いおうじま)が見えている。戦争の舞台となった小笠原諸島硫黄島(いおうとう)との区別のため、薩摩硫黄島と呼称される。

盛んに噴煙を上げる活火山の島で、海中からの噴出物により海面が黄土色に染まる異様な光景を見ることができる。古名を鬼界ヶ島というが、古の人々が感じたであろう人智の及ばぬ得体の知れない恐怖を偲ばせる良い名前だと思う。

 


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最後の島は黒島。島の東西に2つの集落と港を持つ。三島村で唯一火山活動を起源としない島で、かつ最多の人口を有する。

 


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15時40分。島の西側、片泊港で下船。この日は1泊2日の航海スケジュールであったため、みしまは鹿児島側から見て最後の港であるここで碇泊して夜を明かすこととなる。

 


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明日の朝までお世話になる民宿「さら」さん。チェックインの前後で集落を散策する。

 


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港から1kmほど急坂を登った先にある三島村片泊出張所。港に待合所などはないため、乗船券もここで買うこととなる。あまりに初見殺しの立地だが、ほとんど平地のない断崖絶壁の島であるため致し方ない。ちなみに、三島村は役場を自村の領域外(鹿児島市)に置いている数少ない自治体の一つである。そのため、3つの島全てに役場の出張所という形で人員が配置されている。

 

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道中では小屋に繋がれた飼いヤギが草を食んでいた。南の島は何かとヤギに縁のある場所が多いが、この黒島も例外ではないようだ。

 

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黒島は飛行場を持たず、フェリーみしまが島外との唯一の交通手段となるが、片泊港の山手には簡素なヘリポートが設けられている。急病人が発生した際など緊急時のみに用いられるのだろう。

 

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一通り散策を終え、日没前後で少し釣りに興じることとした。

 


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釣果。オジサン(左)は南西諸島の小物釣りでは最もポピュラーと言っても過言ではない魚で、底近くに仕掛けを落とすと特に誘いなど入れなくても簡単に釣れてしまう。ミナミイソハタ(右)は初見の魚だが、色合いや鰭の模様がカサゴに似ており、堤防上に引き上げるまでハタだとは思っていなかった。20cmに満たないが、これでも成熟サイズという小型のハタである。

南の離島とはいえ、緯度自体は九州本土と大きく変わらない三島村。睦月の風は肌寒く、体が冷えきらないうちに撤収した。

 

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宿に戻り、家庭的な夕餉に舌鼓を打つ。刺身のイカは島のアオリイカで、宿のご主人が釣ってきたものだという。豊かな海と苦楽を共にする島の民宿ならではの楽しみである。

 

入浴を済ませ、しばらくTwitterを見るなどしてゴロゴロした後、早々に就寝。明くる日の早起きに備えた。